小児科部長 森 寛(もり ひろし)
2002年 | 兵庫医科大学医学部 卒業 |
2007年 | 日本小児科学会専門医 取得 |
2014年 | 日本アレルギー学会専門医 取得 |
宝塚第一病院を受診される方で、0歳児から小中学生のお子さんに多いのは、卵・乳製品・小麦です。年長になるにつれて徐々に、果物やえび・かになどの甲殻類・魚アレルギーのお子さんの割合が増えます。
そうですね、離乳食を始めてお母さん・お父さんが異変に気付いて受診されるというケースが多いです。なかには0歳前半の月齢で、慢性的な湿疹が出て、アトピー性皮膚炎の診断を受ける場合あもあります。その湿疹の原因の1つとして食物アレルギーが含まれる場合もあります。だいたい生後数か月するとお肌の変化で気付かれる事が多いみたいです。
アトピー性皮膚炎のようなゆっくりとした出方の場合と、食べた直後に症状が出る場合があります。例えばじんま疹が出たり、咳が出たり、お腹が痛くなったり、ゼイゼイしたり、時に強い症状を出して、重篤な状態に陥ることがあります。いわゆるアナフィラキシーという状態です。
宝塚第一病院では、そのようなお子さんの治療も行っています。
はい、アレルギー検査としては宝塚第一病院では血液検査と、可能性がある食材に関してはアレルゲンの負荷試験を行っています。負荷試験とは、実際に摂取していただいて症状がでるかどうか、またアレルギーがあるお子さんが今どの程度まで食べることができるかの評価を行う検査です。
アレルギーは食物アレルギーに限らず必ずアレルゲンと呼ばれる誘因タンパクがあります。このアレルゲンさえコントロールすれば症状は出ません。
症状を出さないようにするために、まずは食物の摂取状況を確認します。成長期にあるお子さんが対象になりますから、原因となる食物を除去する半面、栄養面で不足にならないように、どうやって他の食材で補ってゆくかということを考え、必要かつ最低限の食物除去を行うよう心がけています。
食物除去だけでも、お子さんの成長とともにアレルギーが出にくくなることもありますが、宝塚第一病院では細心の注意を払いながら食物負荷試験をして、症状を出さずに摂取できる量をさがします。そしてご家庭でも続けていただき、個人のペースに合わせてゆっくり増やしてゆく経口免疫療法を行っています。
そうですね。そのため入園・入学の前に病院を受診され、それをきっかけに食べる練習を始めるケースも多いです。年長児の場合、治療には時間がかかる場合もあります。何とかしたいという本人と親御さんの気持ちが強いので、受診をきっかけに僕らがアドバイスをしながら一緒に練習して食べられるようにしてゆくというような取り組みをしています。
そうです、コツコツと粘りが肝心です。
例えば卵アレルギーだったら、卵ボーロや炒り卵を使って、子供たちが嫌がる場合はお菓子とかパンケーキなど、あの手この手を使いながら練習します。他の食材に混ぜて料理したりと、お母さんにも協力してもらっています。ただし初回摂取とペースを上げる時は必ず病院で摂取してもらうようにして、緊急時の対応をとれるようにしています。
この量なら食べられるとわかった分量に関しては、体調が悪くない限り、基本的にお家でも続けてもらいます。
そうです。アレルギー科に限らないと思いますが、特にこの分野はどうしても手間暇やコツコツが必要で、親御さんの理解が重要になってきます。
治療開始当初は2、3週に1回、ある程度通院にも慣れてきたら1か月に1回くらいのペースです。
年長児の場合は達成感とか充実感とか、親御さんからの「頑張ったね」の言葉にすごく喜んでいますね。
年少児や喋れない赤ちゃんの場合は、親御さんが不安になって受診されることが多いので、実際食べてみて大丈夫だというのがわかってくるとお母さんの表情も変わってきます。
これだけ食べられるようになったという実感から、不安が安心感に、また自信に変わってくるようです。
はい。アレルギーの治療はお家での食事摂取が肝心なので、常に食事の度に心配はあるかと思います。そういった中でどれだけ粘り強く練習を続けてもらえるかっていうのを意識しながら、サポートしています。
ちょっと恥ずかしいんですけど、目線の高さを同じにするということ。喋り方もそうなんですが、気持ちも同じ位の年頃に帰った気分で喋るとお子さんも話しやすいし、こっちも楽しいですね。
どうしても嫌がる子は出てきます。そんな時は、口に含むことができたら、後から吐き出してもとにかく褒める。私も「よく頑張った、すごいね」と声を掛けます。お子さんに言ってますが、同時に親御さんにも言ってるんです。「こうするんだよ」とお伝えする意味合いです。お家で親御さんからお子さんにしてもらうために、「今です!今!(褒めて)」と合図を送っています(笑)
子供にとって親に褒めてもらうことほど嬉しいことはないので、一見嫌がって見えても、じりじりと響いてくるようです。すぐには口に入れてくれなくても、徐々に「あれ?そういえば最近食べてくれるようになったね」って。
また、実際口に含むと症状が出なくても苦味が残ったりする場合もあるので、それが長く続いて「食べたくない、嫌だ」とならないように、若い頃にある程度繰り返して、慣れさせておくということも大事かと思います。
小児アレルギーはお子さんと親御さんとのコツコツと時間をかけた取り組みが大切ですが、かけた労力の分結果も伴ってくることも多く、希望をもって治療に臨んでいただきたい。
一度症状を経験したら不安だけ高まってしまう方は多いと思います。アレルギーの治療や付き合い方にはポイントがあるので、まずそこをしっかり押さえておくのが大事です。
当院に来てよかったと言ってもらえるような診察を心がけてゆきます。